2023冬 青森マーク遠征

 

まえがき

 

函館に居住して2年目。

昨年叶わなかった待望の青森マークオサ遠征に行く時が来た。

昨年先輩の家で見たマークオサムシの黒々としたエリトラの亀甲は未だに鮮明な驚きとして覚えている。

本州オサムシの最高峰

いざ

 

 

1日目


3時15分起床

戸締りをして50Lザックを背負い、右手にスーツケース、左手にタモ網を携えて家を出た。


外は爆弾低気圧の到来に伴い暴風だった。
スーツケースがなかなかまっすぐ進まず先が思いやられた。

 

航海中、波は予想よりも穏やかで気づかぬうちに眠りに落ちていた。起きた時には既に青森港に到着していた。

AM 8:30 下船

 

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ようこそ青森

 

小雨の中、少し歩いてレンタカー屋へと向かった。

空きがあったようで良い車を当てて貰えた。

 

出発。

 

まずはコンビニで食料調達。
ごはんを買い、次に隣にあったツルハドラッグへ。
なんとここに来て我らが"ガソリン"ことガッツギアが観測史上最安値を記録した。勿論買い込んだ。

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改めて目的地をセットして一路、有名ポイントへと向かった。


中山道を通り、こんなところにキタカブリはいるのだろうか、などと考えながらドライブしていたら到着。

土手に車を止め、

河川敷の良さげなヨシ原を狙った。

雨は強くなってきていたのでレインウェアを着て、ウェーダーを履いて鍬を持ってヨシ原へと突撃した。

 

採集開始

 

いきなり背丈を超えるヨシ原を掻き分けて進んだ。
勢いでズンズン進んだ結果、体力を消耗してしまった。

ヤエマルに行けなかった今年も結局藪漕ぎチンパンジーになってしまった。
熱くなったので上着を一枚脱いだ。
強い雨のため脱いで仕舞うのもかなり不快だった。

マークがいるという肝心の倒木だか、少ないながらも点在しており、手鍬で柔らかめなものを割りながら進んでいった。

 

するとすぐにアカガネオサが出土した。

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その後も追加はどんどん出た。
渡良瀬遊水地であんなに頑張っていたのが嘘のようだ。しかしサイズは渡瀬産に比べてだいぶ小さかった。

 


雨は降りしきっていた。
延々と続く藪漕ぎで足に疲労が蓄積していく。
ぬかるみに足を取られるのも中々きつく、
予想以上にハードだった。
川辺で腰まで沼にハマった時はかなり焦ったがTwitterか何かで見たモゴモゴ足を動かす方法で抜け出せた。

 

その後も藪を漕ぎ続けて、やっとこさ材を見つけてもマークは一向に出てこなかった。

以後、

 

クワコクワコクワ
アカガネアカガネ
ヨツボシゴミムシ
冷蔵庫
野球ボール
サッカーボール
バレーボール
バスケボール

様々なゴミや廃棄物

 

なかなかにしんどかったので
疲れ方と状況を鑑みて転戦することにした。
しかし舗装路に戻るまでも一苦労だった。

 

対岸へ転戦。


しかしこちらのほうが断然渋かった。
ヨシの背は高く頑丈で、材も殆どなかった。
しばらく漕ぎ続けては脱出し、突入を繰り返したがめぼしい成果は何もなかった。
雨はレインウェアの耐水圧を超え、じわじわと染み込んできた。

時間はもう15時半
最後の粘りで最初のポイントに戻り薮を漕いだが、粗方さっき割ってしまっていたようで新規の材を見つけるのは難しかった。
結局日暮まで粘ったがこの日は結局めぼしい成果は得ることはできなかった。

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疲れ果て、びしょびしょのウエアと1日目にして穴が空いて死んでしまったウェーダーを脱ぎ、急いで車のエアコンで暖を取った。


お腹もすいていたがとにかくお風呂に入りたかった。
行きたい温泉は沢山あったが距離を優先し、近場の温泉に行った。

 

体が冷えていたからか、つま先からジンジンとあたたまった。

 

地元の人々が交わす津軽弁は本当に外国語のようで新鮮だった。

十分に体を温めてから上がった。


その後は道の駅でぐっすりと寝た。

 

2日目


9時起床
日頃の疲れから少し寝過ぎてしまった。
おにぎり食べて昨日のポイントへ。
まだ到達していない上流部からinした

 

しかし藪が濃い。
沼が深い。
進まない。

ハードだった。
しかも材がない。
最初のポイントでやっていた時は

全然マークいない
辛い
という感じだったがもはや材があるだけマシだと思った。
材が割れる喜び、僕は見落としていたのだ。


結局めぼしい成果はなし
アカガネすら取れず。
雨は降りしきっていた。
遠くには雷雲が見え、
ゴロゴロとおっかない音を立てていた。

 

あれがきたらおしまいだ。
こんな成果ではどうしようもなくやりきれないので落ちているボールを手当たり次第投げまくった。


長い長い藪を抜けて虚無。
転戦することに。

 

中州に気合いで上陸。
雨はかなり強まってきている。

道脇に退けられた材がないか見て歩いた。

もう上着の内側までびっしょりだ
寒い
ほんとに寒い
なんだこれ
しかし気合いで進んだ。
やっとの思いで見つけた材は硬かった。

なんとかギリ割れる材を見つけたがnull。

 

寒い。

寒い。

 

どんどん体温が奪われていく。

雷鳴も大きくなっていたので車へと戻り暖をとった。


もう終わりにしたいくらいだったが、時間はまだあった。
とりあえず雨が止んでいそうな北へ向かった。


途中海が見えたが大時化だった。

荒れ狂う津軽海峡

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昼飯休憩

美味しいラーメンだった。

体もあったまったところで

 

いざ

キタカブリ採集へ。

松林がいいとのことで来た道を引き返しながら見ていく。

途中車を降りてやってみたものの立ち枯れはなく、倒木を割ったがヌル。

 

やはり立ち枯れじゃないとダメなのか?
もっと山の方がいいのか?

 

いまいち掴めないまままあ車を走らせた。
山間部に来た。

 

もう日暮まで時間がなかった。
暗くなってきた山道を歩きながら立ち枯れを探す。
細い立ち枯れがあったので割るもnull
山道を進むとすぐに行き止まり。
引き返していく途中に道脇に立ち枯れが見えた。


ちょうどいい高さ。
鍬を入れる。
サクッといった。

 

数回サクッと割ったらその時は来た。

 

ボロッ

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そこには長い足と大きなフォルムが詰まっているのが見えた。

 


キタコレ!!!

 

引っ張り出そうとするとなんと奥にも見える。


まさかの集団越冬か


急いでルアケを出す。

1匹ずつ引き摺り出すと出るわでるわ


結局キタカブリ4匹
オサムシ2匹出てきた。

 

急いで全部ルアケに納めてから改めて見る。

 

前胸はピンクパープルで、
エリトラは緑色に輝いている。


すごい、
綺麗だ

ヒメマイとは全然違う。

 

嬉しかった。

ホッとした。
遠くの温泉に行った。


10時過ぎに道の駅に到着。
昨日と同じ場所で同じようにして寝た。

 

3日目


早めに起きたが車内は冷えていた。
依然として雨も強かった。
天気予報を見ると一時間後には止みそうなので、ご飯食べたり荷物整理等々しながら過ごした。
8時ごろキタカブリ追加狙いで採集開始。
しかし採れず、結局昨日取れたポイントへ。


林内を彷徨うが立ち枯れはあまりない。
材の状態が良さげでも細い木には居なかった。
しばらく歩くと広葉樹の立ち枯れが見えた。
鍬を入れるといい感じの柔らかさだった。

ボロボロと削ると

 

2匹


また複数だ。

見ていない材が減ってきたので遠くまで歩いた。
迷わないか不安だったが、近くに農道があったりして助かった。


良さげの松の材から一匹追加して終了。


最後にため池を掬ったがマツモムシと小さなゲンゴロウだけだった。

 

急いでマークのポイントへと向かった。


狭い農道に駐車。
ヨシ原にin


早速材が見つかった。


しかも柔らかい。
アカガネがたくさん出土した。


その後も数個の材が立て続けに見つかった。
しかし出るのはアカガネばかり。


奥まで藪を漕いで行くが、材は減少
ぬかるみは増し、しまいには膝上まで浸かるように。


ヨシも強靱になってきたが勢いで進んだ。
方向感覚が無くなりかけたがここで一度帰還。


細い川の対岸に行った。


しかしこちらには全然材がなかった。
ぬかるみも酷く、ヨシも硬い。
漕ぎ辛かった。

 

割れる材もないので湿地内で土が盛り上がって陸地化しているヨシの根元などを掘ってみるもゴミムシがちらほらと出るだけだった。

 

かなり体力を消費した。

再び藪を漕いで帰還した。


護岸に上がる時コンクリートの斜面に土溜まりができて草が生えていたところがあったのでめくってみると大量にアカガネが出土した。
20匹以上いた。

 

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一緒に越冬していたカエル

 

もしやと思い対岸に戻り似たような土溜まりをめくってみるが1匹もいなかった。


堤防の反対側の田んぼ側のところもめくってみるもいなかった。不思議だった。


もしかしてあの左岸のエリアに個体数が偏っているのか?それとも若干条件が違く見えたからそのせいか?

採れたところは芝生のような草が根を張り巡らせておりマットのように剥がれたが、他のところではただ土を掘るだけだったからだろうか。

 

燃料切れだったのでここで一度ガッツギアを2本飲み干す。

元気は出たが、

この時点で取れるイメージがわかず
足にも疲労が溜まり嫌になってきた。

気を取り直してもう一度突撃した。

 

またしても木が少ない。
材があっても硬くて割れはしなかった。

 

藪を漕いでいると、苔むした大きな一本の寝返りが見えた。

 

試しに鍬を入れてみると硬くて割れない。
しかし材の表面は硬いからか縦に亀裂がいくつも入っているのが見えた。
もしやと思いコケをめくってみる。

 

アカガネがいた。

そのままむしっていく。


その時

 

 

 

 


明らかにでかいケツが見えた。

 

 

 

 


ワニ皮のような鈍い光沢を放つゴリゴリの条線が入ったエリトラが見えた。

 

 


一目で勝利を確信した。

 

 

そいつはコケをいきなり剥がされてモゴモゴと動いている。


写真を撮る余裕もなくそいつの足を掴んで引っ張り出した。

 

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ウオオオオオオオオ!!!!!!!(歓喜)(絶叫)

 

 

手の中にはあのマークオサムシがいた。

アカガネとは比較にならないその大きさ、迫力に興奮した。

二、三度吠えた。

 

そのまま離さないように、焦りながらもルアケを取り出した。


キタカブリが出ないように、キタカブリと隣接して噛み合わないような位置に入れる。

 

 

カポ

 

 

 

感無量。

 

しばらく余韻に浸りつつもコケを捲るが追加はなかった。
一部柔らかくなっていたので材を割ったがアカガネ1匹で終わった。

 

その後はバイトのシフト調整の失敗で謝ったりしてすごく嫌な気分だったが藪を漕いでいたらその気持ちも次第に薄れた。


今日一で奥まで藪を漕いだら本当にどこだかわからなくなった。

 

疲れも溜まり、堤防に座ってガッツギアを飲んだりマークやキタカブリを眺めたりした。
風が強く体温が奪われて寒くなってきたのでまた突撃したが追加はなかった。

 

寒いのとこれ以上取れる気もしないのもあり、ここで終了とした。

 

風がびゅうびゅうと吹く中、浸水しながらも3日間頑張ってくれたウェーダーを脱いで乾いた服に着替え、荷物を整理した。


時間は早めなので優勝飯を食べることにした。

地元の特産品に舌鼓を打った。

 

その後は前から行きたかった温泉に入りフェリーに乗った。

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12時前に函館に着きそのまま帰宅した。

心地よい疲労感に包まれながら、久々の柔らかいベッドで眠りについた。

 

 

あとがき

 

全体的にしんどい採集だった。

正直とれるだろうと甘く見ていたがやはり本州最高峰は難関だった。

最終日にはもうとれるイメージが湧かなくなってきていたが諦めずにやった甲斐があった。

諦めの悪さが虫採りには重要だと思った。

 

去年先輩の家で見たマークは衝撃的なかっこよさだったが、苦労して自ら手にしたマークはやはり別格だった。

あの湿原の黒い重戦車のようなオサムシがどんな環境に生息しているのかをこの目で見れたのもよかった。

 

 その他、厳しい遠征の中でも青森の地の果て感溢れる冬の寂しい景色だったり、車のシートを倒した時に見えた満点の星空だったり、いく先々の景色に心を打たれた。

やはり虫採りは、遠征はいいものだと思った。この時は研究室で煮詰まった日々を過ごしていたのでまるで溺れていた水の中から顔を出せたような幸せな3日間だった。本当に来れて良かったと思う。

 

今年度で函館ともお別れになる。

ギリギリではあったかなんとか宿題を残さずに旅立たてそうだ。

 

 

2023冬 青森マーク遠征

おしまい