2023夏奄美遠征1日目

 

まえがき

 

虫屋にとって奄美大島は特別な島である。
カミキリではモリヤイをはじめとする多種多様な特産種が、クワガタではアマノコやスジブトが、チョウではアキリデスが虫屋の目を輝かせる。

 

ここ二年間、夏になると決まってむしけんガタ屋LINEは騒がしくなり、奄美をはじめとする離島実況で盛り上がった。

シーズンが終われば経験者は箱を囲んで奄美の思い出話に花を咲かせた。

毎度どの個体がかっこいいだの、〇〇(地名)がどうとかで盛り上がっていた。

その時の皆の顔がそれはそれは楽しそうでそこに混じることができないのがいつも悔しかった。

 

特に

「夏の奄美の空気を思い出す」

そんなフレーズに一人共感できないのが寂しかった。

 

このように僕は大学4年にして夏の奄美未履修であった。
大学入学前には1,2年のうちに奄美に行くつもりだったのだが、色々あって今夏までずれ込んでしまったのだ。

ギリギリ滑り込みセーフであることを願いたい。

 

今回の目標はもちろんモリヤイ

遅ればせながら夏の離島ネキ初チャレンジである。

 

その他は

オオシマミドリ

アマミモンキ

アマノコ73mmUP

スジブト60mmUP

アマミカギモンミドリホソトラ

各種ビロウド

アマミセンノキ

オオシマヤハズ

アマミモモブトコバネ

アマミトラ

アオウバタマ

etc...

 

あげたらキリがないが

色とりどりの憧れの特産種達が今回のターゲットだ。

 

期待を胸に飛行機に乗り込んだ。


飛行機内では最近発売された素晴らしい本、『鹿児島県のカミキリムシ』を読み込み各種カミキリのホストをできる限り頭に叩き込んだ。

 

時間はあっという間に経ち、飛行機は着陸した。

 

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ついてしまった!!!


強い日差しが照り付けら中、息を思いっきり吸い込んだ。

水分をたっぷりと含んだ温い空気が肺を満たす感じがした。


これが

夏の奄美

 

まずはその一端を感じた

 

空港を出たら早速レンタカーを借りた。
車はピンク色のかわいらしい軽だった。
早速Bluetoothを繋ぎ、離島プレイリストをかけてぶち上げていく。


時間は13時半

モリヤイには遅い時間だ。


今回の遠征はモリヤイの発生時期的に前半戦が勝負であることは分かっていたし、午前はモリヤイ、午後はその他カミキリ、夜はバナトラと過密スケジュールになることもなんとなく予想していたため、もしかしたらこの機会を逃したら観光は出来ないかもしれないと思い、空港近くの名勝、あやまる岬へ。

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海が青い!!!
西表とは違った青さだ。
手前はエメラルドブルーで沖は深いブルー
どちらにしても濃い。

 

これが奄美、、
すげぇや

 

感動冷めやらぬままカメラを持って展望台に向かう。

 

うおおー

美しい
雄大だ、

 

なんて思っていたら目の前を黄緑色の光沢が横切った。
そのフォルム

 

アヤムネスジタマムシ!!!

 

いきなりの南国美麗タマムシに心拍数は一気に上がった。

そいつはしばらく旋回したのち展望台から手が届きそうな位置のハゼの木の樹冠の葉に止まった。

 

しかし、絶妙に届かない。


足元を確認するも足掛かりは存在しない。
木の枝を探すもそんなものは無い。
でも車に戻っていると多分逃げられてしまう。

指を咥えてそいつが運良く手前に飛んでくるのを祈った。
何回か飛んでこちらに来そうな時もあったがギリギリ届かない。
願いも虚しくアヤムネは飛んでいってしまった。。。

 

悔しいが、それよりもいきなり現れた輝く大型甲虫に僕の胸は高鳴っていた。

 

こうなってしまっては止まらない。
もう完全に虫採りモードに入ってしまった。


走って車に戻り長竿と毒瓶を取り出してルッキングを始める。
サペルらしき食痕のある葉を掬うも何も入らない。
もうなんでもいい、早く第一甲虫を見つけたい。
その一心でスウィーピングしていると黒い丸っこいシルエットが。

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第一甲虫
虹色のゴミダマ

 

よく分からんが記念に毒瓶に放り込んだ。

その後付近の小道を散策しているとアカメガシワの花が。

何か来ていないか見るとなんと葉の上にカミキリのシルエットが

その葉をスウィープしてみる

 

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(車内撮影)


おおお

いきなりケルシウムだ。

いかにも南って感じだ!

 

その後は花を救っていく。

 

ヨツスジトラが入った。

特産種ではないがカミキリが網に入ると嬉しい。

 

リュウキュウツヤハナムグリ
どうせこれからバナトラで嫌というほど見るだろうが採集しておく。
普通に美麗種だ、、

網が汚れるのが難点だが。。。


他にもアカギカメムシなど色鮮やかな南方系の種を追加してここでは終了。

 

良い気分気分で車に戻り名瀬方面に向かう。


時刻は15時

 

車を走らせていると見覚えのある店名が

 

「ひさ倉」だ。

 

日程的にいつ行けるか分からないしそもそもお腹が減っているので食べていくことに。

ラストオーダーは終わっていたがご厚意で食べさて貰えた。

注文するとすぐにスープが運ばれてきた。
鶏飯はただの鶏めしのようなものだと思ってたのでお茶漬け風なのは意外だった。

ご飯と具材が続き、
いざ食べ方を読んで鶏飯を錬成した。

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これが鶏飯か、
  

とてもおいしかった。 

 

時刻は16時。

叩き網ならできそうだ。
とりあえず名瀬方面へ向かいながら適当な山道に入っていく。


峠付近にいくつもある待避所には伐採した葉がついた枝が置かれていた。

 

これは流石にいるだろ!


自信満々で叩くも何も落ちない。
意外と甘くないようだ。

 

次の待避所へ
ここでも落ちない。
おかしい

そして次の待避所へ
今まで見たことない種類の枯れ枝が見える。
少し期待して叩くと

 

ぽてっ

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おおやっと落ちた

さらに叩くと今度は
大きなシルエットが!

 

オオシマヤハズカミキリ

 

おおでけぇ

この木だったか、、

 

どうやら粗朶ならなんでもいいわけではなく特定の一種類の木に集まってるようだ。

次の待避所でも同じ木の粗朶からヤハズや、が採れた。


割と葉がたくさん付いていたのでしばき倒すとアリに紛れて小さなカミキリのシルエットが!

 

チビコバネだ!(驚き)(超同定)


レア臭がする。

しかし名前がわからない

帰って同定したら

 

リュウキュウチビコバネ
だった。
どうやら奄美産は珍品らしい。

ちょっと嬉しい。

 

とりあえず1つ成果は出したので安心して名瀬に向かう。

道中適当な林道に入ったがめぼしい成果は得られず。

最後に時間は押していたがモリヤイの林道を下見したが道を違えて引き返した。

 

日暮前に宿にチェックイン
自分の性格上、初日は気持ちを押さえてても飛ばしてしまうので最初の二日間は贅沢にもホテル泊で体力を温存する計画だ。

まだ外は明るいのでとりあえず風呂に入った。


大浴場キモチェーー

さっぱりしたのでそのままイオンに買い出しへ。
今日の夜ご飯と明日の朝、昼ごはんを仕入れた。
大きなイオンだった。
物価も安くて驚いた。
卵も沢山あったことに驚いた。
いつも通りのポカリとこれからのハード日程に備えてガッツギアやクリーム玄米ブランなど栄養食を買い込んだ。

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↑これから毎日のようにお世話になる半額手巻き寿司。いつも時間がなくて運転しながら車内で頬張っていた。

 


日は暮れた!
さあ勝負だ!

待ってろクワガタ達!!!

 

 


意気揚々と

街頭を探して車を走らせる。

 

 

 

 

 


走らせる

 

 

 

 

 

 

 

 


走らせる

 

 

 

 

 

 

 

全然いねぇ!


LEDしかない!


てかそもそも月めっちゃ出てる!

 

 

本来なら今日はセーブするつもりだったのに、クワガタ0人という事態を前にして、それだけは避けたいというプライドが帰宿の邪魔をした。


今まで見なかった集落の中や山道を見て回る

しかしクワガタの姿はない。


途中からはみかん畑を探したが全然見つからない。

 

 

まずい。。。

クワガタ0人は嫌だ!!!!

 


焦って細瑠璃にヘルプの電話をかけて苦戦している旨を伝えるとみかんばたけはGoogleマップで見つけるものだということを教えてもらった。


「こんなところよさそうじゃない?」

と親切にも1箇所めぼしいところを教えてもらったが、1匹目は自己採したいという気持ちから違うところを選定した。

 

Googleマップに案内させたところロングダートを走る羽目になった。

 

海沿いの真っ暗な悪路でガッチャンガッチャンしながら一体俺は何をしているのだろうと思った。

 

 

頭の中に鈍い疲労感が広がる中なんとか目的地に到着したが、畑はちゃんとした柵に囲われている上に犬に吠えられまくってあえなく撤退した。

 

悪あがきで街灯を見て回ったものの
結局この日はクワガタを見ることは叶わなかった。

 

情けねぇ。。。

このクワガタ島でクワガタ0匹とは。。。

 

 

 

疲れた。。。

 

毎度のことだが初日はセーブしようと思いはするものの結局チンパンになってしまう。

真剣にラジオのお悩み相談にでも泣きつきたいぐらいだ。

しかし、それだけ楽しんでいるということなのだろう。実際楽しかった。

 

粘ったせいで結局大浴場の営業時間は終わっていたのでシャワーを浴びて少し採集品を眺めて長い一日を終えた。

2023冬 青森マーク遠征

 

まえがき

 

函館に居住して2年目。

昨年叶わなかった待望の青森マークオサ遠征に行く時が来た。

昨年先輩の家で見たマークオサムシの黒々としたエリトラの亀甲は未だに鮮明な驚きとして覚えている。

本州オサムシの最高峰

いざ

 

 

1日目


3時15分起床

戸締りをして50Lザックを背負い、右手にスーツケース、左手にタモ網を携えて家を出た。


外は爆弾低気圧の到来に伴い暴風だった。
スーツケースがなかなかまっすぐ進まず先が思いやられた。

 

航海中、波は予想よりも穏やかで気づかぬうちに眠りに落ちていた。起きた時には既に青森港に到着していた。

AM 8:30 下船

 

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ようこそ青森

 

小雨の中、少し歩いてレンタカー屋へと向かった。

空きがあったようで良い車を当てて貰えた。

 

出発。

 

まずはコンビニで食料調達。
ごはんを買い、次に隣にあったツルハドラッグへ。
なんとここに来て我らが"ガソリン"ことガッツギアが観測史上最安値を記録した。勿論買い込んだ。

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改めて目的地をセットして一路、有名ポイントへと向かった。


中山道を通り、こんなところにキタカブリはいるのだろうか、などと考えながらドライブしていたら到着。

土手に車を止め、

河川敷の良さげなヨシ原を狙った。

雨は強くなってきていたのでレインウェアを着て、ウェーダーを履いて鍬を持ってヨシ原へと突撃した。

 

採集開始

 

いきなり背丈を超えるヨシ原を掻き分けて進んだ。
勢いでズンズン進んだ結果、体力を消耗してしまった。

ヤエマルに行けなかった今年も結局藪漕ぎチンパンジーになってしまった。
熱くなったので上着を一枚脱いだ。
強い雨のため脱いで仕舞うのもかなり不快だった。

マークがいるという肝心の倒木だか、少ないながらも点在しており、手鍬で柔らかめなものを割りながら進んでいった。

 

するとすぐにアカガネオサが出土した。

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その後も追加はどんどん出た。
渡良瀬遊水地であんなに頑張っていたのが嘘のようだ。しかしサイズは渡瀬産に比べてだいぶ小さかった。

 


雨は降りしきっていた。
延々と続く藪漕ぎで足に疲労が蓄積していく。
ぬかるみに足を取られるのも中々きつく、
予想以上にハードだった。
川辺で腰まで沼にハマった時はかなり焦ったがTwitterか何かで見たモゴモゴ足を動かす方法で抜け出せた。

 

その後も藪を漕ぎ続けて、やっとこさ材を見つけてもマークは一向に出てこなかった。

以後、

 

クワコクワコクワ
アカガネアカガネ
ヨツボシゴミムシ
冷蔵庫
野球ボール
サッカーボール
バレーボール
バスケボール

様々なゴミや廃棄物

 

なかなかにしんどかったので
疲れ方と状況を鑑みて転戦することにした。
しかし舗装路に戻るまでも一苦労だった。

 

対岸へ転戦。


しかしこちらのほうが断然渋かった。
ヨシの背は高く頑丈で、材も殆どなかった。
しばらく漕ぎ続けては脱出し、突入を繰り返したがめぼしい成果は何もなかった。
雨はレインウェアの耐水圧を超え、じわじわと染み込んできた。

時間はもう15時半
最後の粘りで最初のポイントに戻り薮を漕いだが、粗方さっき割ってしまっていたようで新規の材を見つけるのは難しかった。
結局日暮まで粘ったがこの日は結局めぼしい成果は得ることはできなかった。

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疲れ果て、びしょびしょのウエアと1日目にして穴が空いて死んでしまったウェーダーを脱ぎ、急いで車のエアコンで暖を取った。


お腹もすいていたがとにかくお風呂に入りたかった。
行きたい温泉は沢山あったが距離を優先し、近場の温泉に行った。

 

体が冷えていたからか、つま先からジンジンとあたたまった。

 

地元の人々が交わす津軽弁は本当に外国語のようで新鮮だった。

十分に体を温めてから上がった。


その後は道の駅でぐっすりと寝た。

 

2日目


9時起床
日頃の疲れから少し寝過ぎてしまった。
おにぎり食べて昨日のポイントへ。
まだ到達していない上流部からinした

 

しかし藪が濃い。
沼が深い。
進まない。

ハードだった。
しかも材がない。
最初のポイントでやっていた時は

全然マークいない
辛い
という感じだったがもはや材があるだけマシだと思った。
材が割れる喜び、僕は見落としていたのだ。


結局めぼしい成果はなし
アカガネすら取れず。
雨は降りしきっていた。
遠くには雷雲が見え、
ゴロゴロとおっかない音を立てていた。

 

あれがきたらおしまいだ。
こんな成果ではどうしようもなくやりきれないので落ちているボールを手当たり次第投げまくった。


長い長い藪を抜けて虚無。
転戦することに。

 

中州に気合いで上陸。
雨はかなり強まってきている。

道脇に退けられた材がないか見て歩いた。

もう上着の内側までびっしょりだ
寒い
ほんとに寒い
なんだこれ
しかし気合いで進んだ。
やっとの思いで見つけた材は硬かった。

なんとかギリ割れる材を見つけたがnull。

 

寒い。

寒い。

 

どんどん体温が奪われていく。

雷鳴も大きくなっていたので車へと戻り暖をとった。


もう終わりにしたいくらいだったが、時間はまだあった。
とりあえず雨が止んでいそうな北へ向かった。


途中海が見えたが大時化だった。

荒れ狂う津軽海峡

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昼飯休憩

美味しいラーメンだった。

体もあったまったところで

 

いざ

キタカブリ採集へ。

松林がいいとのことで来た道を引き返しながら見ていく。

途中車を降りてやってみたものの立ち枯れはなく、倒木を割ったがヌル。

 

やはり立ち枯れじゃないとダメなのか?
もっと山の方がいいのか?

 

いまいち掴めないまままあ車を走らせた。
山間部に来た。

 

もう日暮まで時間がなかった。
暗くなってきた山道を歩きながら立ち枯れを探す。
細い立ち枯れがあったので割るもnull
山道を進むとすぐに行き止まり。
引き返していく途中に道脇に立ち枯れが見えた。


ちょうどいい高さ。
鍬を入れる。
サクッといった。

 

数回サクッと割ったらその時は来た。

 

ボロッ

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そこには長い足と大きなフォルムが詰まっているのが見えた。

 


キタコレ!!!

 

引っ張り出そうとするとなんと奥にも見える。


まさかの集団越冬か


急いでルアケを出す。

1匹ずつ引き摺り出すと出るわでるわ


結局キタカブリ4匹
オサムシ2匹出てきた。

 

急いで全部ルアケに納めてから改めて見る。

 

前胸はピンクパープルで、
エリトラは緑色に輝いている。


すごい、
綺麗だ

ヒメマイとは全然違う。

 

嬉しかった。

ホッとした。
遠くの温泉に行った。


10時過ぎに道の駅に到着。
昨日と同じ場所で同じようにして寝た。

 

3日目


早めに起きたが車内は冷えていた。
依然として雨も強かった。
天気予報を見ると一時間後には止みそうなので、ご飯食べたり荷物整理等々しながら過ごした。
8時ごろキタカブリ追加狙いで採集開始。
しかし採れず、結局昨日取れたポイントへ。


林内を彷徨うが立ち枯れはあまりない。
材の状態が良さげでも細い木には居なかった。
しばらく歩くと広葉樹の立ち枯れが見えた。
鍬を入れるといい感じの柔らかさだった。

ボロボロと削ると

 

2匹


また複数だ。

見ていない材が減ってきたので遠くまで歩いた。
迷わないか不安だったが、近くに農道があったりして助かった。


良さげの松の材から一匹追加して終了。


最後にため池を掬ったがマツモムシと小さなゲンゴロウだけだった。

 

急いでマークのポイントへと向かった。


狭い農道に駐車。
ヨシ原にin


早速材が見つかった。


しかも柔らかい。
アカガネがたくさん出土した。


その後も数個の材が立て続けに見つかった。
しかし出るのはアカガネばかり。


奥まで藪を漕いで行くが、材は減少
ぬかるみは増し、しまいには膝上まで浸かるように。


ヨシも強靱になってきたが勢いで進んだ。
方向感覚が無くなりかけたがここで一度帰還。


細い川の対岸に行った。


しかしこちらには全然材がなかった。
ぬかるみも酷く、ヨシも硬い。
漕ぎ辛かった。

 

割れる材もないので湿地内で土が盛り上がって陸地化しているヨシの根元などを掘ってみるもゴミムシがちらほらと出るだけだった。

 

かなり体力を消費した。

再び藪を漕いで帰還した。


護岸に上がる時コンクリートの斜面に土溜まりができて草が生えていたところがあったのでめくってみると大量にアカガネが出土した。
20匹以上いた。

 

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一緒に越冬していたカエル

 

もしやと思い対岸に戻り似たような土溜まりをめくってみるが1匹もいなかった。


堤防の反対側の田んぼ側のところもめくってみるもいなかった。不思議だった。


もしかしてあの左岸のエリアに個体数が偏っているのか?それとも若干条件が違く見えたからそのせいか?

採れたところは芝生のような草が根を張り巡らせておりマットのように剥がれたが、他のところではただ土を掘るだけだったからだろうか。

 

燃料切れだったのでここで一度ガッツギアを2本飲み干す。

元気は出たが、

この時点で取れるイメージがわかず
足にも疲労が溜まり嫌になってきた。

気を取り直してもう一度突撃した。

 

またしても木が少ない。
材があっても硬くて割れはしなかった。

 

藪を漕いでいると、苔むした大きな一本の寝返りが見えた。

 

試しに鍬を入れてみると硬くて割れない。
しかし材の表面は硬いからか縦に亀裂がいくつも入っているのが見えた。
もしやと思いコケをめくってみる。

 

アカガネがいた。

そのままむしっていく。


その時

 

 

 

 


明らかにでかいケツが見えた。

 

 

 

 


ワニ皮のような鈍い光沢を放つゴリゴリの条線が入ったエリトラが見えた。

 

 


一目で勝利を確信した。

 

 

そいつはコケをいきなり剥がされてモゴモゴと動いている。


写真を撮る余裕もなくそいつの足を掴んで引っ張り出した。

 

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ウオオオオオオオオ!!!!!!!(歓喜)(絶叫)

 

 

手の中にはあのマークオサムシがいた。

アカガネとは比較にならないその大きさ、迫力に興奮した。

二、三度吠えた。

 

そのまま離さないように、焦りながらもルアケを取り出した。


キタカブリが出ないように、キタカブリと隣接して噛み合わないような位置に入れる。

 

 

カポ

 

 

 

感無量。

 

しばらく余韻に浸りつつもコケを捲るが追加はなかった。
一部柔らかくなっていたので材を割ったがアカガネ1匹で終わった。

 

その後はバイトのシフト調整の失敗で謝ったりしてすごく嫌な気分だったが藪を漕いでいたらその気持ちも次第に薄れた。


今日一で奥まで藪を漕いだら本当にどこだかわからなくなった。

 

疲れも溜まり、堤防に座ってガッツギアを飲んだりマークやキタカブリを眺めたりした。
風が強く体温が奪われて寒くなってきたのでまた突撃したが追加はなかった。

 

寒いのとこれ以上取れる気もしないのもあり、ここで終了とした。

 

風がびゅうびゅうと吹く中、浸水しながらも3日間頑張ってくれたウェーダーを脱いで乾いた服に着替え、荷物を整理した。


時間は早めなので優勝飯を食べることにした。

地元の特産品に舌鼓を打った。

 

その後は前から行きたかった温泉に入りフェリーに乗った。

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12時前に函館に着きそのまま帰宅した。

心地よい疲労感に包まれながら、久々の柔らかいベッドで眠りについた。

 

 

あとがき

 

全体的にしんどい採集だった。

正直とれるだろうと甘く見ていたがやはり本州最高峰は難関だった。

最終日にはもうとれるイメージが湧かなくなってきていたが諦めずにやった甲斐があった。

諦めの悪さが虫採りには重要だと思った。

 

去年先輩の家で見たマークは衝撃的なかっこよさだったが、苦労して自ら手にしたマークはやはり別格だった。

あの湿原の黒い重戦車のようなオサムシがどんな環境に生息しているのかをこの目で見れたのもよかった。

 

 その他、厳しい遠征の中でも青森の地の果て感溢れる冬の寂しい景色だったり、車のシートを倒した時に見えた満点の星空だったり、いく先々の景色に心を打たれた。

やはり虫採りは、遠征はいいものだと思った。この時は研究室で煮詰まった日々を過ごしていたのでまるで溺れていた水の中から顔を出せたような幸せな3日間だった。本当に来れて良かったと思う。

 

今年度で函館ともお別れになる。

ギリギリではあったかなんとか宿題を残さずに旅立たてそうだ。

 

 

2023冬 青森マーク遠征

おしまい

 

 

 

 

2022西表ヤエマル採集記8日目(最終日)

2022年10月30日

 

朝7時に目覚ましで起きた。
すっきりとした目覚めだった。

 

枕元にあったポカリを飲み干し
ペットボトルを洗って
ゴミを捨てた。


部屋を片付けて残りの荷物をスーツケースに詰め、最後にオーナーさんに挨拶した。

 

パイセンが迎えにきてくれたのでパイカーで港へ出発した。

最後の仲間川を渡る。

 

港には既にMPさんがいた。
見慣れた小さなチケット売り場で八重山観光フェリーのチケットを買った。

 

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十サザンキング十

 

出発時刻になってしまったので別れを惜しみつつ乗船した。

 

さようなら西表
ありがとう西表
またくるよ西表

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フェリーに乗るとパイセンは一瞬で寝た。

パイセンといえども疲れは溜まっていたのだろう。

 

微睡の中、石垣港に到着した。
すぐにバスに乗り、寝ていたら空港に着いた。

 

空港では最後にお土産買った。
迷った挙句紅芋タルトとロイズ石垣島のチョコを買った。


毎度買うか悩むヒルギのマグカップ、遂に買おうとしたらMPさんも持っているとのこと。
独自性がないというかかぶりたくなさもあって迷ったが結局購入。

後で思ったが買っといてよかった。

 

時間が押していたのですぐにお盆を持ってパイセンとMPさんが座っている席に向かい、アーサと海ぶどうそばを食べた。
プチプチして美味しかった。

 

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机の上に置かれたMPさんのスマホケースはやはり臭かった。

汗と努力の結晶、ただのそのものがが完成していた。


パイセンは違う飛行機だったのでここでお別れ。

 

バイバイパイセン。


遅れること数十分僕らも搭乗した。

 

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最後に空から石垣の景色を眺めた。

青い海ともしばらくお別れだ。

その後はずっと寝ていた。

 

体は南国仕様になっていたため途中、寒さで目覚めた。ちょうど良いタイミングでCAさんがやってきたのでコンソメスープを頂いた。

 

着陸。


乗り換えに時間があったので
MPさんと待合ロビーでアイスを食べた。

慎重にタトウを開き、68mmの無事を確認した。その姿を目に焼き付けた。

 

MPさんが先にフライトだったのでここでお別れをした。

僕はとうとう一人になりタリーズコーヒーへ行った。
迷ったが辿り着き、モカを頼んだ。

 

徐々に、そして整然と、日常へと戻っていくステップを踏んだ。


コーヒーは美味しかった。

忘れないうちにと日記を書いた。

 

やがて搭乗時刻となった。
函館行きの小さめの2列シートの飛行機

音楽聴きながら眠っていたらすぐに着陸した。

 

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函館はもう夕暮れだった。

飛行機から降りた連絡路は寒かった。

 

荷物を受け取ってバス停へ


薄手のジャケットを羽織ったが、冷たい風が貫通した。

乗り換えバス停で降り、近くのスーパー・アークスに寄ったがお弁当は何も残っていなかった。

 

再びバス乗り最寄りバス停を、降りて歩いた。


マンションに到着した。


重いスーツケースを持ち上げ階段を登った。
4階に辿り着き自室のドアを開けた。

やっと一息つくことができた。

 

 

こうして僕の2022年、大学3年の秋の西表ヤエマル遠征は終わった。

 

2022西表ヤエマル採集記7日目

2022年10月29日

 

朝細瑠璃を港に送ってそのままガソリンを入れてレンタカーを港に返却した。

 

今日は島に残っているパイセンとMPさんと僕とでチームパイセンを結成した。


大原郵便局前でパイセンに拾ってもらい帰宅。


部屋の片付けをして、パイセンとアイスの実食べながらマルバネ見た。

その後はハンモックで寝たり悠々自適な時間を過ごしたのちにチムパイでラフラガーデンへ。


ラフラガーデンでは鍬吾郎氏と合流。

初対面でちょっと緊張したが、虫オタクとは思えない陽気な方だった。

 

鍬吾郎氏おすすめの味噌カツ定食に舌鼓を打った。

MPさんにはパフェを分けてもらった。
甘いクリームが舌に染み渡った。

帰宅してからは直ぐに荷造りを済ませて
民宿やまねこへ。

民宿やまねこは強いマルバネ屋が定宿としていることで有名な、危険地帯である。

ここでMPさんと合流しスーパー玉盛で買い出しを済ませた。

 

僕はピザパンとカレーパンを購入。

 

再びやまねこのMPさんの部屋に戻り島ギネス鑑賞会が開かれた。



民宿やまねこは全体的に薄暗く、MPさんの布製スマホケースからは異臭が放たれていたこともあり、いかにも巣窟といった雰囲気が醸し出されていた。

 


日暮までは時間があったので暇を持て余したチムパイは公園へ行くことに。

 

地元の子らが遊んでいる中、大人気なく遊んだ。

 

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ジャングルジム

 

「ツルアダンやん」byパイセン

 


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有名な
山猫滑り台

 

滑り台はコンクリート製であり、露出した膝を擦って負傷した。

 

体育館でこけた時にする火傷的なアレで中々痛く、今遠征最大の傷となった。

 

 

十分満足したところで島ギネス部屋に戻った。

 

暑くて臭くて蚊も飛んでいたので、外に出て夕焼に染まった空を見ながらカレーパン食べた。

涼しい風が吹いていて気持ちよかった。

 

やがてMPさんが出てきて出発した。

 

やっと採集である。

 

今日はかつての大産地で採集することに。このエリアはかつては隆盛を極めたものの現在ではショボエリア認定されており、あまり人も近寄らないエリアである。

 

しかし、昨年パイセンはここで大歯を含む複数等を採集しており、せっかくの最終日であるというのもあり、野心的なプロジェクトとしてこの選定に至った。



いくぞ!チームパイセン!

今夜優勝するのは俺たちだ!

 

 

最終日。

皆既に成果を上げている状況。

開拓とまでは行かないがそれに近い状況。

メンバーは最後まで島に残ったもの同士。

 

これらの要因がチームの結束力を高め、若干浮き足だった雰囲気がチーム内に流れていた。

 

しかし疲れからか、正直僕のやる気はあまり湧いて来なかった。そのため、ゆるっと採集して早めに下山してMPさんとゲンゴロウでも取ろうかと考えていた。

 

林道の入り口に到着。

車を止めて歩き始めた。

林道ではひと足先にパイセンが藪の中に消えていった。

MPさんとはとある名所で別れた。

 

僕は少し歩き、立ちションして出発。

案の定ノロノロと登って行く。


太い木はあるが林内は乾燥気味でアダンもまあまあ茂っていた。
モチベも湧かず、力が入らず、時折座ったりしながら登っていった。

 

大きな尾根に合流するとちょっとだけ環境は良くなったが肝心のヤエマルはいない。

やぶ漕いだり滑ってるうちに危うくMPが0になりかけた。

 

 

と、

 

 

 

 

 

 

 

 

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まさかの大歯がいた。


かっけぇ

 

赤い

 


急にモチベが上昇した。
ここにいるなら周囲にもいるはずだ。
そう思って探したが追加は得られなかった。

 


先へと進む。
アダンはさらに濃くなり鬱陶しい。
アダンの藪に入ったり良さげなエリアに出たりを繰り返した。

 

しかし全体として乾燥気味であり、スダジイは少なくウラジロガシが多い。


一応ピークを目指して藪を漕いでいくものの、とうとう壁のようなアダンが立ちはだかり、体力も消耗していたのでここで撤退することにした。

 

電波が通じたのでMPさんにLINEをして、降り始めたが藪が濃く思うように降りられなかった。


回避ついでに違う尾根を見ようとしてもうまくいかずに結局元の道に合流した。


最後は体力温存しながら、と思っていたが、滑ったりも多くかなりメンタルも消耗することとなった。

 

やがて、大歯が取れたところに戻ってきた。

改めて周囲を見渡してみると確かにそこそこいい環境だった。しかし何もいなかった。

 

ここももうすぐダメになってしまうのだろうか。

 

ヤエマルの産地はこのようにして環境の変遷と共に移動していくのだろうか。

 

 

ともあれ、ちゃんとこのエリアのラベルの大歯が採れたのは嬉しいことだ。


1/1が60越えの大歯なのはラッキーとしか言いようがない。最終日マジックか。

 

その後は藪は薄くなってきたのでペースを上げた。


結局、途中大滑りしたり尻餅ついたりヴォアーってなったりしたが無事に下山。


しかしMPさんはいなかった。

LINEするとパイセンと別れたところにいるらしい
のでそこまで歩いていった。


脇からせり出した木々の葉はトンネルのように林道を覆っていたが、頂点がひらけていて星空が川のようになっていて綺麗だった。


戻るとMPさんはライトをつけて座っていた。

大歯を見せるといたく気に入ってくれて嬉しかった。

 

「カッケェ 」

「赤ェ」

 

同行者のこういった反応も楽しみの一つだ。

良い反応をしてもらえると嬉しかったり誇らしい。

 

 

話を聞くと、MPさんは早めに戻ってゲンゴロウを採っていたらしい。

 

お互いに疲れていたし焦る必要もなかったので、しばらく座って大歯を見たりMPさんが採ってきたオキナワスジゲンゴロウなどを見た。


羨ましかった。

MPさんは何気にサキシマヒラタも取っていた。

僕は今遠征でサキシマヒラタは取っていなかったのでこちらも羨ましかったが、MPさんとしてはやはりヤエマルが羨ましいらしい。


「ヤエマルは格が違うなぁ」byMPさん

「体積が違う」byMPさん

 

 

こうして体力も回復したところでゲンゴロウを取りに田んぼへと向かった。


しかしMPさんが言っていた通り田んぼは収穫を目前にして水が抜かれており、残された水辺といえば1メートルほどの水溜まりしかなかった。

掬ってみると、ヒメゲンは取れるもののスジゲンは採れない。

 


その後も一応周囲を探したものの水辺はなかった。

 

そう、MPさんは僕がくる前に狩り尽くしていたのだった。

 

 

田んぼの周りには糸が張ってあったが、親切なMPさんはこれは電気流れてないからから大丈夫だよと教えてくれた。

そう言って大胆に柵を乗り越えたMPさんはガッツリ感電していた。

 

 

 

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フトモモ

 


車まで戻り、マップを見て他の水田記号のある場所を見に行ったが、そこに水田はなかった。


結局林道の入り口に戻って車の中でダイナミック琉球を流して、マルバネラップ動画を見て寝た。

 

(注)マルバネラップ:カラオケの時に細瑠璃がアドリブでするラップのこと。彼の十八番であり、かなり盛り上がる。

 


約1時間後パイセンがダイナミック琉球を流しながら帰還。


ちゃんと二つ大歯取っていた。

さすがパイセンである。

 

 

 

その後はしばらくヤエマルを眺めていた。


空には雲がかかり、星は見えなかったが、ふと横を見るとホタルが飛んできた。

ぼわぁーっとした弱々しい黄色い光を眺め、最終日の余韻に浸っていると
だんだんと空を覆っていた雲がはけ始め、星空が見えてきた。

 

 

星空
ホタル
パイセンの臭い足

 

 

こうして僕等の採集は幕を閉じたのであった。

 

 

早い明日の朝に向けて荷造りを済ませて目覚ましをかけて眠りについたのは4時ぐらいだった。

 

2022西表ヤエマル採集記6日目(休息日)

2022年10月28日 

 

めでたく今日は誕生日である。

3年連続誕生日を西表の山中で迎えることができて、しかも毎年遠征最大個体を採れている僕は幸せ者である。

 

皆ノンストップでここまで走り抜け、成果もあがってきたというところで由布島に行くことになった。

由布島とは西表島の真横にある小さな島で、水牛車に乗って渡ることができることで有名である。しかしデカいヤエマルを採っていない者は切符を買えないシステムになっており、不正に島に侵入したことがバレた場合、水牛の糞と共に堆肥にされて植物園に撒かれるという

 

まぁどちらにせよ、優勝したものしか(メンタル的に)入れない特別な島なのだ。

 

幸いなことに僕らは成果は上げてきているので安心して入ることができる。はずである。

 

渡島する前に新八食堂で腹ごしらえをした。

無性に野菜を食べたくなったので
野菜ソーキを注文。

 

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腹も満たされたところで由布島に渡る。

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由布島ではチョウ園をみたり、砂浜に行ったりジェラートを食べたりした。


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しかし結局みんなで地面に這いつくばってハンミョウを取ることとなり、虫屋だった。

 

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無事脱島

 

 

さて、バカンスを楽しんだところで夜の部について考えた。

 

成果は一定ラインを超えた。

ポイントも流石に今日は居ないだろう。

新規開拓するほど体力も残っていない。

 

これらを踏まえて、思い切って今日は山に入らないことに決めた。

 

MPさん夕陽でも見てツダナナフシを取ろう。

 

MPさんと合流し、上原方面へと向かう。

 

途中やまねこ橋のとこであまりに夕日が綺麗だったので車から降りて夕陽を眺めた。

 

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夕陽
感動した。

人生で1番綺麗な景色だったかもしれない。
時を忘れてずっと見ていた。

 

オレンジ色から薄紫の空には細く儚げで螺鈿のように美しい三日月が浮かんでいた。

そして背景の山腹からは

ヘッドライトの明かりが幾つも見えた…


あまりに綺麗だったのでMPさんとお互いに記念写真を取った。

 

正直山に入っておいた方が良かったんじゃないかとも思ってもいたのだが、この景色を見ただけで今日の選択が間違っていなかったことを確信した。

 

こんな夕陽も見ずに地面と木肌ばっか見て歩いている虫屋とMPさんは呟いた。王者の一言である。

 

その後はスーパー川満でMPさんはサーターアンダギーを僕はグミを買ってツダナナフシを採りにいった。

 

しかしこれが難航した。

 

情報がないのでマップを見て良さげな浜を見て回る。


最初は有名な綺麗な浜。

しかし
全然いない

 

食痕はあるが
本当にいない

しょうがないので

別の浜に転戦した。


リゾートの近くで食痕はこっちの方が多かったけれど全然いなかった。


海岸林も見ているとまさかの金ハブがいた。

 

だいぶ探したので疲れてきた。

空を見上げると満天の星空が。

 

あんまり虫採りばっかしててもなと思い
浜辺に仰向けになった。


星が落ちてきそうだった夜空だった。
波の音もすぐそばに聞こえ、
海風が頬を撫でた。


幸せだとおもった。

 

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ヤシガニ
デカイの含めいっぱい居た

 

引くに引けなくなり
白浜まで行った

 

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途中マップでまるまぽんさん岩という奇妙な名前の岩を見つけた。

まるまぽんさん節というのもあるらしい。

(MPさんじゃん)

 

とても疲れた。
最後仮眠とってなんとか寝ないようにして帰宅した。

 

これで採集難易度はツダナナフシ>>>ヤエマル68.7ということになった。

2022西表ヤエマル採集記5日目

2022年10月27日

昨日の激闘から転じていつものエリアへ

駐車場で準備をしていると続々と車がやってきた。急いで準備を済ませて細瑠璃とかいくわさんとMPさんと入山。

強い雨が降っていたので濡れながら行進となった。

とはいえ、それは仲良く話しながらと言ったものではなく、早い者勝ちのレースの様相を帯びていた。

僕は細瑠璃とMPさんが違うルートに分かれた隙にズンズンと引き離し先頭のかいくわ先輩に追いついた。

やがて、かいくわ先輩と別れ尾根に取り付いた。

 

ポイントで日暮れを待つ。

いつもの尾根で日が暮れていく。

今西表の山の中にいる。
その事実を、喜びを噛み締めた。

 

意外と真っ暗になるには時間がかかるので周囲を見て回ると去年のペンチ君(去年採集した異様に湾曲した個体、64.9mm)の木に中歯が。

採集はせずにハイボルの木に戻り、また日暮れを待った。

競合者のライトが見えないか気が気ではなかったが、無事何事もなく真っ暗になった。

 

見回り開始。

小歯はちらほらと見られたが大歯はゼロ。

隣の尾根に行くがマルバネの姿はない。
だいぶしゃぶられ尽くしている感じだ。

意気消沈してガーミンを見ていると「よん8」の文字が。

 

まさか

 

去年の最終日マックス君(64.8mm)はこの尾根だと思っていたが、そっちの尾根なのか?

 

 

急遽路線変更

 


谷へと降っていく。

途中尾根を見返してみる。

すると

 

 

 

 

 

 

大歯!

 

 

 

 

 


おおっ
生き残っていたか

よく見ると小顎髭は無く、裏側を見てみるとブラシは消滅していた。発生も後期だなと思った。

 

その後は追加はなく、隣の尾根に取り付いた。割と険しい傾斜を這い上がると大木が並んでいた。
ここが本来見るべき本命の尾根であったことを確信した。


しばらく歩き、良さげなフレークが溜まった大木発見した。

 

ぐるっと覗き込む

 

 

 

大歯

 

 


おおおっ


しかも複数だ

 


サイズこそないがとても嬉しい。

 

そのまま尾根を進むんでいくとまた大きなタテヅノが見えた

 

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デカイっ

 


63upを確信した

 


動画を撮って幹から引き剥がす

 

ノギスを当てると

 

 

 


62…

 


そうか…

 

62だって十分デカイのだがやはり63UPが欲しい…

 


(とてもかっこいい個体で宿に戻って見てみるとその太さや巻は十分に63upを思わせるに値するものだった)

 


大歯は残っている。
しかし足跡はあった


早めにいっておけば…


ちょっとそう思ったがしょうがない。

 

そのまま木を見ていくものの小歯のみ。

なかなかうまくは行かないなぁと思った。

 

と、その時

 

 

 

 

 

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そこそこ大きそうな大歯が大木の根元についていた。
まぁ、大きいけど61くらいだろう。
そう思ってノギスを当てると62で余裕で当たった。

 

おっと


まさか

 


ノギスを広げていく



63

 

 



64

 



64.6

 

 

 

デカイッッッッ

 

 

 


優勝だ
うぉぉぉぉぉおおおお

 

 

 

やっと六十三の壁を突破した。
嬉しかった。

 

時間はタイムリミットギリギリ。

体は疲れ切っていたものの周囲を見て回りながら、ノロノロと降る。

 

しかし追加はない。

 

最後の踏ん張りで今年の確変エリアを見て回ったが全然ヤエマルの姿はなかった。

採集圧を感じた。

 

その後は素直に降りて道に合流。

 

歩いているとズボンにヒルがついているのを発見した。
長靴を脱ぐと中にも1匹。
外のベルトの部分にも2匹。
ダニのような瘡蓋のようなものもあったので取ったら血がちょっと出た。
怖くなってポイズンリムーバーで処置した。

 

萎えたがゆっくりと
駐車場に戻った。

体が冷えて寒い。
また車の中で寝てしまった。


やがて細瑠璃が帰ってきた
大歯を取っていた。
僕の成果を伝えると喜んでくれた。

 

かっこいいー
でかいー
と自分のことのように喜んでくれた。

 

僕は誕生日を迎えたので細ルリはY川にエビ取りに行く?とか提案してきたがこの疲れと寒さとこの時間で今から行くのは正気ではないと思ったので断った。


早くお湯シャワーを浴びたかった。

 

 

宿に入って浴びた優勝シャワーは

めちゃくちゃ気持ち良かった。。。

2022西表ヤエマル採集記4日目

2022年10月26日

 

3日連続同エリア、しかも大歯ヌルという雑魚ムーブをかましてしまったことで僕のプライドはボロボロの小歯(符節欠けB品)だった。

 

しかし、昨日爆睡したからか調子は戻ってきている。

 

ポイントでも採れる気がしないし、なんといっても人の多さにもうんざりしてたので、新規開拓へ行くことにした。

 

 

 

しばしMAP(MPではない)と睨めっこ

 

誰も行ったことがなく、かつ採れそうなエリアを探したがこれがなかなか見つからない。

 

主要な川はあらかた人が入っているし、緩斜面を見つけても人里に近すぎたり、島の中心部から孤立した疎林ばかりである。

 

大原から上原方面へ目を滑らせていくとTを超えてもうSしか残ってないか…と思い始めた頃、一つの緩斜面を見つけた。

 

これが、一夜のドラマを生むこととなった魔境X川へと続く尾根である。

 

 

ここなら採れるかもしれない。
一抹の希望を胸に昼ごはんを食べた。

 

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汚い机…

 

 

 

 


レポートをやったりしているうちに出発は遅くなってしまった。

いつものように2人で食料を買い、一路、夕暮れを追いかけるように上原方面へと向かった。


ワクワク感と共にヌルの怖さも感じながら、

久しぶりの有名山駐車場で細瑠璃を下ろして林道の終点へと向かった。

 

 

しかし、
入口が全くわからないままYAMAPと睨めっこする羽目に。

 

 

この尾根は近いけど、藪が濃そう。
核心部がここら辺とすると繋がってるこの地帯から可能性がありそうなどいろいろ考えて目星をつけてスタート。

 

 

最初は草原を進んで行った。
所々落ちている牛糞を避けつつ進み幾つかの有刺鉄線網を越えた。
10分ほど歩くと牧草地は終わり、
森に入ると待っていたのはいきなりの谷地形だった。

しかもそこにはシダの深い海が広がっていた。


あまり見たことない景色に驚きながらも降下するが掴むところがない上にシダが滑って大変だった。


半分滑落するような形で谷に降りた。


谷には小川が流れており流れはかなり緩い。

お世辞にも綺麗とは言えない川だ。

進行方向を見定めて取り付いた小さな尾根にはスダジイはなくリュウキュウマツの大木が林立していた。

 

昨日までのエリアとの植生との違いを感じる


手こずったもののなんとか尾根を降りて小さな沢を遡上し、やっとこさ本命ポイントに続く尾根に取り付いたものの林内は乾燥していた

 

それからは

 

 

 


激薮

 

 

 

 


激薮

 

 

 

 

 

 


延々と激薮

 

 

 

 

 

そして
至る所にイノシシの痕跡

 

 

 


きつい!
きついぞ!!

 

その上いそうな気配が今のところない。


奥に進まないとダメそうだ。

 

以前として尾根の中心は藪で進みづらいので少し巻いたり隙間を縫うようにして進む。

 

蔓植物も多く引っかかっては声を上げる。

 

 

そうして藪を漕いでいると右手にチクっとした痛みが。掴んでいた植物を見るとイラガが。

 

 


意気消沈。。。

 

 

 


幸いなことにジンジンとした痛みが残るが手が使えなくなるほどではなかったので先を急ぐ。

 

 

 

しかし今度は右手に
小さなムカデが降ってきた。

 

毒虫パラダイスかここは!


だいぶ体力も気力も削られてきた。

 

入山前、手前に存在する台地を中心にそこから伸びる尾根を幾つか見ればどこかしらにはいるだろうと思っていた。

しかし蓋を開けてみれば、2つ尾根を下ってみたところでスダジイがまず少ないし、地形も意外と急だし藪も濃かった。

 

そのため計画を変更して奥へと続く尾根を進んでいくことに決めた。

 


しばらく藪と格闘しながら進んでいると左手の藪の中にしょぼい立ち枯れの様なスダジイを見つけた。


普段なら見ない木だが、スダジイが少ない中いるとしたらこんな木しかないだろうと思った。

 

 

 

藪を掻き分けて木にたどり着く。
すると、その時はいきなりやってきた。

 

 

 

 

 

 

小歯!

 

 

 

もう枯れている木肌に

小歯がくっついている情景が
目に飛び込んできた。

 

 

 

気分がパァァァっと明るくなるのをかんじた。
もう写真を撮る余裕などなく、プロボクサーのジャブ並みの速さでそいつを掴んだ。

 

それはどこにでもいるような普通の小歯だった

けれど、こんなに嬉しいんだってくらい嬉しかった。多分、マルバネ採集って本来こうなんだって思った。

 

勢い余って叫んでしまった。

 

 

一頭いれば2頭いる。

しかし、木を見ましてみるもその姿はなし。


だが、近くにもう一本しょぼい木があるのを見つけた。

 

 

 


多分いる

 

 

 

 

 


直感した。

近づいてみると

 

 

 

そこには

 

 

 


4匹!

 

 


しかし、全部小歯…

 

でもそんなことはどうでもいい
全部キープしてしまった。


じゃないとやってられなかったというのが正確かもしれない。

 

よっしゃあ
やったぞ!
これで帰れる…

 


安堵も束の間、先へと進んでいくと今度は藪に絡まれた普通の木が。


裏に回ると
中歯が高めの位置にへばりついていた。

 

小5匹から→中ときたか

確実にステップアップしている。

 

 

 

 

しかし以前として薮は濃い。
辛い状況は変わらない。

どうしようもなく
叫びたくなった。

 

大歯といえばMP!
ヤエマルといえばMP!
虫研といえば!
北大といえば!
クワガタといえばMP!
伝説のヤエマル採集家!
MP!

 

疲れていた。

 

 

叫びながら行進していると薮が開けた。
尾根の下の方まで見渡せる。

緩斜面に大きなスダジイがいくつも生えている。

ペースを上げて見回るもマルバネの姿はない。

上り下りを繰り返し見つけたウロのある木を舐めるように見て回ると、


裏側に

 

 

 

 


大きなアゴ

 

 

 


おおっ

これは

 

 

 

 

 

 

 

 

イボ大

 

 

 

 

くっ

このイボさえなければ
切実に思った。

 

それから数本目で
今度は大きな木の根元のウロにデカイケツが!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メスである。

 

 

 

 

 

 

残念ながら大歯ではなかったものの
小→中→イボ大→メス
と、確実にステップアップしている


こうなれば次は大歯だろう

 


しかし時間がない
けど苦労した分引き返す気になれない
疲れていて時間感覚も鈍っていた。

この尾根だけ下ろう。
そう思って降りる事にした。

 

 


しかし中々追加は得られない。
大木はあるのにもぬけの殻なのだ。

 

 

 

そうこうしているうちに
だんだん川の音が大きくなってきた。

後で知ることになるがこの音の主こそが秘境K川である。

 

もう少しで尾根が終わってしまう。
見える範囲ではあと3本くらいしかない。

その中でも大きいのが2本連続している。


一本目をサラッと見回り2本目へ
なかなか太い木だ。
見た感じついてはいない。
裏についていてくれ!

そう願いながら素早く回り込む
と、


なんと、

 

なんと!!

 

 

 

 

 


いる!

 

いる!

 

でかい!!

 

 

 

 


大歯!

もう、どう見ても大歯!!

 

 

 

 

うおおお!

 


気がついたら
奇声をあげていた
そして妖しくワインレッドに光るそいつを引き剥がし
また叫んだ。

 

 

 

 

ウオオオオオオオ!

 

 

 

 

 

疲れも場所も時の流れも全部忘れて
ひっそりと流れるK川のほとりで

喉が痛くなるまで叫んでいた。

 

本当に嬉しかった。
心が痺れていた。

危うく
泣いてしまうところだった。

 

冷静になって
時計を見ると12時前

 


うそ、
絶対に間に合わないやん

 

急いで帰ろうとするも薮が濃すぎて全然進まない

細瑠璃、マジでごめん

 

本当に薮が濃い
二度と行くまいとおもった。

 

 

 

おしまい